青森には美術館目当てに訪れるべきスポットがいくつもあるのです。
例えば、青森県立美術館や十和田市現代美術館などが挙げられます。
美術館といえば絵画展示が多いですが、中には絵画以外に別視点からテーマを切り取った展示方法がなされ、SNSで話題になることもあります。
一度美術館の中に入って体感すると、また訪れたくなるほどの魅力が満載です。
この記事では、青森県の美術館について紹介しますので、興味を持っていただけたら幸いです。
この記事の目次
青森県立美術館
青森県立美術館は2006年7月13日に開館されました。三内丸山遺跡の近くに建てられ外観は白で統一されています。
三内丸山の発掘現場をモチーフにしており、地面が幾何学的に切り込まれています。
来館したら見るべき作品や見どころについて3つ紹介します。
あおもり犬
1つ目は高さは約8.5メートル、横幅は約6.7メートルの「あおもり犬」です。
国内だけにとどまらず世界でも活躍する美術家である奈良美智によって制作されました。
哀愁を帯びた犬の立体作品は、どことなく現代社会に生きる人間の様相を表現しています。
Miss Forest/森の子
2つ目は高さ約6メートルのブロンズ像「Miss Forest/森の子」です。
同じく奈良美智によって制作され、彼がデザインした八角堂の中に納められています。
自然とともに語り出すような魅力を漂わせています。
アレコホール
3つ目は「アレコホール」です。
縦と横がそれぞれ21m、高さが19mで四層吹き抜けの大空間となっています。
何もない空間に見えますが、20世紀を代表する画家のシャガールが描いた背景画が展示されているのです。
また青森県立美術館が目指すものとして既存の物にとらわれず、子どもの感性と創造力を育むために未来志向で発信する努力を重ねています。
これまでの取り組みの甲斐あって国内外から450万人を超える来場者数を記録しました。
2023年の4月下旬から予定されている「シン・ゴジラ」や「シン・エヴァンゲリヲン」などで有名な庵野秀明展が開催されることがあって、多くの来場者が予想されます。
十和田市現代美術館
十和田市現代美術館は2008年4月26日に開館されました。建物の特徴は以下のとおりです。
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個々の展示室をそれぞれ「アートのための家」として独立
敷地内に分散させて建物を配置
ガラスの廊下でつなげることで見映えの向上
十和田市現代美術館が目指すものとして、アートによる「新たな体験」を提供し未来の創造へ橋渡しをすることが目的で、以下の使命を掲げています。
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来場者に生活と人生に精神的な豊かさを与える
アートを通じて十和田を日本有数の魅力的な街として発信
街・地域・伝統との交流を通して知的な刺激をもたらす
これらはすべて「Arts Towada」計画に基づいたもので、十和田市のまちづくりプロジェクトの一環です。
そして持続可能な運営方法を模索しながら努めています。
過去の有名な展示物として2012年に奈良美智の「青い森の ちいさな ちいさな おうち」という個展が開かれ、初期の作品から当時の最新作まで展示され、多くの来場者を惹きつけました。
現在展示中となっているのが美術界では名の知れた百瀬文の「口を寄せる」です。
コンセプトは声だけが聞こえ、映像は流れません。
ジェンダーの問題に取り組んでいることもあり、この声が男性なのか女性なのか、見た目で判断してほしくない意図が込められてます。
さまざまな取り組みの結果として2022年には開館から総入館者数200万人を達成しました。
「こんな作品を展示してほしい」などの要望やお問い合わせにも応じていますので、興味がある人は十和田市現代美術館に展示作品について要望してみましょう。
青森公立大学 国際芸術センター青森
青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)は2001年12月に開館されました。青森公立大学が運営し、自然豊かな八甲田山麓に建てたことには意味があり、「見えない建築」をコンセプトとしているのです。
国際芸術センター青森の建物の特徴は以下のとおりです。
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カーブした壁と窓からの自然光の入る設計
自然環境も含めて全体が展示空間
創造的な可能性を持たせた工夫がされている
一般的な美術館では何かしらの作品が常設展示されていますが、国際芸術センター青森は常設展示を実施しておりません。
その代わりに、広大な敷地内に野外作品を点在させることで、自然豊かな森の散策と共に行えるよう工夫を凝らしています。
ただし、冬季は実施されない場合がございますので、ご注意ください。
また、「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」・「展覧会」・「教育普及」の3つのプログラムから美術の表現者と閲覧の参加者が相互に価値を創造できるための取り組みを実施しながら、活動しています。
棟方志功記念館
棟方志功記念館は1975年11月に開館しました。棟方志功は青森県出身の板画家で、ゴッホや川上澄生の作品に影響を受け美術界で活躍する道を選びました。
駆け出し当初は無名に近い存在でしたが、板画の道を志すようになってからは徐々に頭角を現し、1952年にスイスのルガノで開かれた第2回国際版画展で棟方志功は駒井哲郎と共に日本人として初の優秀賞を受賞したのです。
1955年には第3回サンパウロ・ビエンナーレに板画『二菩薩釈迦十大弟子』などを出品して版画部門の最高賞を受賞しました。
これらの実績を残したことで「世界のムナカタ」と称されるようになったのです。
棟方志功の代表作は『女人観世音板画巻』や『美魅壽玖鳥板壁画譜』などがあります。
出張展示などがない限り、世界のムナカタの作品を堪能できるのは棟方志功記念館だけです。
これまで 189 万人を超える来館者を記録しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で来館者数の落ち込みが長期にわたった結果、運営状況が悪化したことで、2024年3月31日をもって閉館が決まりました。
ただ、一部作品は移管され展示される予定となっています。
弘前れんが倉庫美術館
弘前れんが倉庫美術館は2020年7月11日に開館されました。当初は4月開館の予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で延期しました。
名前の通り、この美術館はレンガでできており、かつては日本酒やシードルの生産工場として使用されており、工場として使用されなくなると倉庫として活用されてきた歴史があります。
美術館として生まれ変わるために建物の改修が必要でした。
建築家の田根剛氏が立ち上がり以下の要素を取り入れた改修を行いました。
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高度な耐震補強と
既存の煉瓦壁を使用
内外無傷で保存する設計
建物の記憶を継承できるような造り
見方を変えると、生まれ変わった弘前れんが倉庫美術館自体が、ある意味では1つの美術作品です。
コンセプトとして、新たな価値の創造と可能性の開発を掲げています。
また、直近の展示会として「もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?」奈良美智展弘前 2002-2006 ドキュメント展を開催しています。
今後も定期的にイベントを積極的に開催していく予定を立てていますので、来場者数の増加が見込まれます。
寺山修司記念館
寺山修司記念館は1997年7月に三沢市にて開館しました。画家ではなく、どちらかといえば歌人・劇作家です。
常設展示には第1章から第8章まであり、彼の生きざまが資料として展示されています。
企画展示では「寺山修司記念館25周年記念特別企画展2022」と題して『寺山修司のラジオドラマ』の特別展が開かれ、関連企画も行われています。
寺山修司について知りたい人は、ぜひいらしてください。
常田健 土蔵のアトリエ美術館
『常田健 土蔵のアトリエ美術館』は仮オープン期間を含めると2005年から開館しました。
常田健は青森県生まれの画家です。
リンゴ園を営む傍らで絵を描き、彼のリンゴ園の敷地内に小さな美術館が佇むように建っており、油絵やデデッサン画などを300点ほどが収蔵されています。
また「津軽のゴーギャン」と呼び声が高く、絵の構図と力強いタッチが評価され農民画家として広く知られるようになりました。
常田健の代表作として『ひるね』や『田の草取り』などがあり、二科展に出展して入選を果たしました。
その後も数多くの絵を描いて美術の分野で実績を残した作品は、いずれも館内にて観覧することができます。
残念ながら新型コロナウイルスの影響や財団活動停止などにより2022年5月22日を最後に休館する運びとなってしまいました。
現時点で再開館の見通しは立っておりません。
七戸町立鷹山宇一記念美術館
七戸町立鷹山宇一記念美術館は1994年8月1日に開館しました。
鷹山宇一は七戸町で生まれ、やがて上京して画家となりました。
鷹山宇一の代表作品は『荒野の歌』です。
二科展に出品され会員努力賞を受賞し、神奈川県立近代美術館でも展覧会が開かれたほど美術的価値を評価されています。
七戸町立鷹山宇一記念美術館では鷹山宇一が描いた作品の常設展示が行われており、鳥谷幡山・上泉華陽・平野四郎などの作品も時折展示しています。
不定期ですが、特別展が開かれ、直近では国際写真サロン展を実施中(2023年3月26日まで)です。
また、彼は西洋オイルランプの収集家としても有名で併設されている「ランプ館」で19世紀後半の優美な装飾を施した洋燈の美しさを堪能することができます。
帆風美術館
帆風(ばんふう)美術館は2008年に開館した東北初の現代美術館です。
県立や市立とは異なり、民間企業が運営している美術館となっています。
一説によると、地元八戸への社会貢献の意味合いで建てられたそうです。
通常の美術館と異なり「デジタル光筆画」を採用しています。
独自技術ゆえに詳細は不明ですが、印刷におけるカラーマネジメント技術を応用したものです。
その技術で、門外不出とされる作品を原画を傷つけることなく原寸大のまま複製し、作品展示にこぎつけました。
複製したものではありますが、ガラス越しではなく限りなく近い状態で日本絵画を目にすることができるのは、帆風美術館を含めても多くはありません。
直近では「池大雅に目ならい、作品おひろめ展」を開催しました。
企画展を半年ごとに開催していますので、気になる方はホームページを確認してみましょう。
八戸市美術館
八戸市美術館は2021年11月3日に開館しました。
設立のコンセプトはアートを通した出会いが人を育み、人の成長がまちを創ることです。
八戸市美術館では「アートファーマー」と呼ばれる美術館活動に主体的に関わる市民の協力を得て、地域の新しい価値を生み出すために運営しています。
アートファーマーが関わる直近のプロジェクトとして「タノミマスプロジェクト」が実行中です。
また、学校連携にも力を入れており、子どもたちの中に眠る潜在能力を引き出す取り組みを行って新しい価値を創り出せる努力を行っています。
展覧会は美術館企画と一般企画に分かれています。
直近では「コレクションラボ004 伊藤二子―生のかたち―」が開催中(2023年4月10日まで)です。
一般企画は2023年4月2日まで「伊藤二子 回顧展 -その一瞬-」が開催されています。
施設の貸出を行っておりますので、作品創作発表の場として利用可能です。
申し込みの際は、一度ホームページをご確認ください。