初競りで高値が付く大間のマグロ。一本釣りで1匹ずつ丁寧に釣り上げられたクロマグロは、黒いダイヤと呼ばれるほどの高級食材です。赤身と脂身のバランスが良く、とろけるようなおいしさが特徴で、また食べたいと思うこと間違いなし。
青森は、日本海・太平洋・津軽海峡・陸奥湾の4つの海に囲まれている海産地帯で、暖流と寒流がぶつかる場所でもあります。豊富なえさが集まることで、大きくて身の詰まったマグロが獲れるというわけです。
この記事では、青森のマグロが有名な理由や、大間以外のマグロの産地はどこにあるのかを知ることができます。大間へのアクセス方法や、おいしいマグロ料理が味わえるお店も紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
青森でマグロ三昧
青森で水揚げされるマグロは、天然の本マグロで、正式名称をクロマグロといいます。キハダマグロ、メバチマグロ、ミナミマグロ、ビンナガ、カツオなどを含むマグロの中でも、とくに高級食材として扱われています。
津軽半島から下北半島へ回遊するクロマグロは、獲れた場所によって名前が変わることを知っていますか?
5月ごろから水揚げされ始める青森マグロは、日本海に面した深浦で獲れることから、深浦マグロと呼ばれます。その後、えさとなるイカや小魚が北上するとともに、小泊マグロ、三厩(みんまや)マグロ、龍飛(たっぴ)マグロ、大間マグロとして水揚げされるようになります。青森のクロマグロは、獲れる時期によって味が異なるため、マグロが獲れ始める5月以降に青森を訪れる際は、ぜひ食べ比べてみてください。
青森のマグロはなぜ有名なのか
正月前後が旬となる青森のマグロは、築地市場で初競りにかけられ、高値が付くほど人気を集めていますが、なぜそこまで有名なのでしょうか?
それは、冬の津軽海峡で獲れるマグロの大きさと、マグロの漁獲方法が一本釣りであることが大いに関係しています。冬の津軽海峡は、暖流と寒流の影響により豊富なプランクトンが生息します。プランクトンを食べるイカや小魚が集まり、それらがマグロのえさとなるため、身の詰まった大きなマグロが育つわけです。
マグロは、定置網漁や延縄漁などで一度にたくさん獲る方法と、一本釣りで1匹ずつ獲る方法があります。青森でもとくに有名な大間のマグロは、後者の一本釣りを採用しています。釣れたマグロの後処理がすばやくできるため、傷付けることが少なく、より新鮮な状態での出荷が可能です。
豊富なえさが集まる漁場であることと、漁師がこだわっている漁獲方法により、青森マグロの品質や価値が保たれているのです。
青森は大間以外でもマグロが獲れる
有名なマグロの町として知られる青森県大間町ですが、大間以外にもマグロが獲れる場所がいくつかあります。
もっとも漁獲時期の早い場所が、日本海に面した青森の最西端に位置する深浦です。深浦マグロは、5月~9月頃が旬となります。
津軽半島から日本海に向け突き出した権現崎に位置する小泊では、7月~12月に水揚げされます。
暖流と寒流がぶつかる、津軽半島の先端に位置する龍飛は、潮の流れが速いのが特徴です。9月~11月に水揚げされるアオリイカをえさに、マグロを釣り上げます。
龍飛岬の目の前に広がる津軽海峡付近に位置する三厩。複雑な海底地形と、速い潮のおかげで、マグロの漁場が作られています。
8月~1月に旬をむかえる大間のマグロですが、実はもっと早い時期から青森マグロの水揚げが行われているのです。えさとともに水揚げ場所が変化する青森マグロは、年間を通して楽しむことができそうですね。
大間マグロ
本州最北端に位置する大間町。マグロといえば大間のマグロ、青森といえば大間のマグロといっても過言ではないほど、有名なブランドのマグロです。潮の流れが複雑な大間では、群れの前にえさを落とし、針を食わせる一本釣り漁が行われています。船を操る技術、えさを落とすタイミング、えさや道具の選び方など、注意するポイントがたくさんあり、非常に難しい漁法です。大きいマグロは、1匹で数百kgとなるものもいるため、一本釣り漁をする漁師は命がけです。
日中は一本釣り漁、夜は延縄漁と、時間によって漁獲方法を変えているのも、大間マグロの特徴といえるでしょう。
大間崎にあるマグロのモニュメントは、実際に釣り上げられた440kgのマグロをモチーフにしています。一本釣りの凄さと、実物大のマグロの迫力を目にすることができますよ。
大間のマグロが獲れる時期
大間のマグロは8月頃から獲れ始め、時期によっては1月まで獲れることもあります。その長い期間の中でも、とくに脂が乗っておいしいとされるのが、10月~12月の寒い時期。回遊魚としても知られるマグロは、暖流に乗ってやってきます。水温が冷たい時期は、マグロの身がぎゅっと引き締まり、脂ののりも最高潮に。
一番おいしい10月~12月に青森を訪れ、大間のマグロを堪能してみましょう。
深浦マグロ
青森の中で、もっとも早い時期から水揚げが始まるのが、深浦マグロです。5月~8月頃は定置網漁で、9月以降は延縄漁で漁獲されます。世界遺産である白神山地の雪解け水に含まれる栄養と、深浦近海の深い海底地形の影響で、プランクトンが大量に発生するそう。プランクトンを食べる小魚やイカが集まり、暖流に乗ってきたマグロがそれらを食べるため、漁獲量が多くなるのです。
また、深浦マグロを知ってもらうために、地元の人たちが力を入れたのが「深浦マグロステーキ丼」です。深浦で獲れたマグロを、ジンギスカン鍋で軽くあぶり焼き、専用のタレとご飯と一緒に食べるというメニュー。刺身で食べる王道スタイルではなく、あえて自分で焼いてうまみを閉じ込める食べ方。片面焼きや両面焼きなど、焼き具合を調整して最高のマグロステーキを作りましょう。
三厩マグロ
三厩(みんまや)マグロは、龍飛岬と津軽海峡の間にある、三厩という地域で獲れるものを指します。三厩は、日本海を北上する暖流が流れ込むため、潮の流れが速いです。それと複雑な海底地形が絡み合うことで、マグロの好漁場が形成されます。三厩マグロは一本釣り漁で行われます。発泡スチロール製の浮きにテグスを巻き、その先に釣り針とえさを付けた仕掛けを投げて、マグロが食い付くのを待つそうです。かかったら、浮きを引き上げ、巻揚げ機でゆっくりとテグスを引き寄せて釣り上げます。この方法だと、なるべく傷を付けない状態での後処理が可能です。すぐに氷で冷やすと、品質と鮮度が高い状態で出荷されます。
主に、7月~1月に水揚げされる三厩マグロは、10月頃を境に味わいが変化します。えさとなる魚介類が変化するため、10月まではあっさりとしたマグロ、10月以降は脂がのったこってりとしたマグロとなるそう。実際に食べてみて、自分の舌で違いを楽しみましょう。
龍飛マグロ
暖流と寒流がぶつかり、潮の流れが速い海域である龍飛。漁獲方法は、三厩マグロと同じ一本釣り漁で行われます。
龍飛では、ヤリイカやイワシの定置網漁が行われており、それをえさとしてマグロを釣り上げています。甘みが強く、イカの王様とも呼ばれるアオリイカが獲れる9月~11月頃。地元の漁師たちは、ヤリイカやイワシをアオリイカに変えてマグロを獲るようになります。
龍飛岬は、陸奥湾・日本海・津軽海峡を見渡せるだけではなく、大間のある下北半島や北海道が目視で確認できる場所にあります。大間マグロと龍飛マグロは、水揚げの場所が違うだけで、マグロ自体に違いはありません。全く同じマグロであるため、どちらで食べてもOK。
龍飛では、マグロのから揚げや、イカやホタテとマグロの三色丼、マグロの漬け丼などのグルメが味わえます。津軽海峡を眺めながらのゆったりとしたランチタイムは、心地のいい休日を過ごせそうです。
小泊マグロ
津軽半島から日本海に向け突き出した権現崎沖は、スルメイカ・ウスメバル・マダラなどの漁場です。これらはマグロのえさとなるため、必然的にこの周辺海域がマグロの漁場にもなります。
小泊マグロは、7月~12月にかけて、大間のマグロと同様の延縄漁で水揚げされています。えさに使うのはスルメイカがメインですが、時期に合わせてブリの幼魚やアオリイカを使用するなどの工夫を凝らしているそう。さらに、冷却機を導入してマグロの鮮度・品質の向上を図るなど、技術の向上に努めている小泊の漁師たち。
延縄漁は、えさや針のコストが嵩むデメリットがあります。しかし、マグロのえさであるイカや魚がたくさん獲れる小泊は、延縄漁にはうってつけの場所といえるでしょう。
小泊は、龍飛や三厩よりも内陸部に位置しています。少しでも移動の負担を減らしつつ、新鮮なマグロ料理を食べたいのであれば、小泊へ行くのがおすすめです。
大間のマグロが食べられるお店
本州最北端の地である、大間。観光で青森を訪れる人や、日本一周旅行などをしている人は、旅の目的地として訪れる人も多いでしょう。せっかく大間まで足を運ぶのであれば、新鮮でおいしいマグロを食べてみたいですよね。
ここでは、訪れた人のレビューや店舗情報をもとに、大間のマグロが食べられるお店を厳選して紹介します。
大間へのアクセス
函館方面からのアクセスと、青森市内からのアクセス、八戸市内からのアクセス、マイカーの場合、高速バスの場合をまとめて紹介します。
◇函館方面から
新函館北斗駅(電車20分)→函館駅(シャトルバス30分)→函館フェリーターミナル(津軽海峡フェリー90分)→大間フェリーターミナル
◇青森市内から
新青森駅(電車6分/バス15分)→青森駅(電車40分)→野辺地駅(快速電車50分)→下北駅(バス100分)→大間
◇八戸市内から
八戸駅(電車45分)→野辺地駅(快速電車50分)→下北駅(バス100分)→大間
◇マイカーの場合
七戸・十和田駅から2時間30分、東北自動車道 青森東ICから3時間、八戸自動車道 八戸ICから3時間
◇高速バスの場合
新宿(しもきた号で12時間40分)→下北駅(バス100分)→大間
東京(シリウス号で11時間10分)→七戸十和田駅(車150分)→大間
上記の時間は、あくまでも目安です。天候や道路状況により前後する可能性があるので、余裕をもって計画を立ててください。
魚喰いの大間んぞく
大間崎から徒歩圏内に位置するので、ランチのお店選びに迷ったら、まずはここをチェック!
営業時間は8時~18時で、休みは不定休、年末年始も営業しています。テーブル席5つ(20名)、座敷席6つ(24名)の店内。
7月~12月は、大間マグロの水揚げ期間です。魚喰いの大間んぞくでは、この期間中、不定期で週に1~3回、店頭にてマグロの解体を行います。見学可能で、解体したマグロはそのまま注文して店内で食べてOK。
おすすめメニューは、大トロ・中トロ・赤身が乗った「三色マグロ丼」です。白いご飯が隠れるように盛られているのは、大きくカットされた赤身と中トロ。その上には、脂がのった厚めの大トロが添えられています。4,000円ほどで食べられる贅沢な丼ですが、せっかく大間に足を運んだのであれば、ぜひ一度ご堪能ください。魚喰いの大間んぞく
海峡荘
海峡荘は、民宿も営んでいる、マグロ料理が食べられるお店です。4月中旬~10月末までは、日曜日を含め営業していますが、11月~4月中旬の期間は休業しています。
おすすめメニューは、分厚く切られた大トロ・中トロ・赤身が10切乗った「マグロ丼」、貝やサーモン、タコなど、日替りで違った海鮮が楽しめる「海峡日替り丼」です。
また、脂が苦手な人や、リーズナブルな価格で楽しみたい人には、赤身を甘辛のタレに漬け込んだ「マグロ漬け丼」もおすすめです。
1,700円~3,500円ほどの予算で、食べ応えのあるマグロ丼が楽しめます。海峡荘
あけみちゃん号
4月下旬~11月末の期間で営業予定のあけみちゃん号。営業時間は、8時30分~17時(19時)。朝から晩まで営業しているため、朝ごはんも楽しめます。
おすすめメニューは、「マグロ丼」、マグロとウニが乗った「二色丼」、マグロとウニとイクラが乗った「三色丼」です。
上記3つのメニューは、どれも白いご飯が1粒も見えないほど、海鮮がたっぷり盛られています。とくに「マグロ丼」は、盛り付ける人や日によって、部位や大きさがさまざまだそう。毎回少しずつ違う丼を楽しめる面白さが、また来たいと思わせてくれそうです。
2,000円~3,000円で、新鮮なマグロ・ウニ・イクラを贅沢に楽しめるのは、大間のお店の特権ではないでしょうか。あけみちゃん号
浜寿司
11時~21時30分まで営業している浜寿司は、その名の通りお寿司が食べられるお店です。最高級のクロマグロにこだわっているため、予算は3,000円~6,000円ほどで検討してください。
おすすめメニューは、大トロ2貫、中トロ2貫、赤身4貫、鉄火巻1本の、厳選したマグロだけを使った「本鮪握り盛り合わせ」、マグロの部位が少しずつ異なる「本鮪・赤身丼」、「本鮪・上丼」、「本鮪・特上丼」です。特に、大間マグロの握り盛り合わせは、6,000円ほどで食べられる贅沢なお寿司ですが、他では味わえない魅力が詰まっています。遠方から大間に足を運んだのであれば、なおさら食べてみてほしい逸品です。浜寿司
お食事処かもめ
大間崎のシンボルともいえる、実寸大のマグロのモニュメントが目の前に見える場所に位置する、お食事処かもめ。
営業時間は9時~16時頃までで、定休日はありません。丼系のメニューは、丼茶碗ではなく、すべておひつに盛り付けられているため、上品で華やかな丼を楽しめます。
おすすめメニューは、ウニとマグロの「二色丼」、大間といえば定番の、大トロ・中トロ・赤身が乗った「マグロ丼」です。
通常の丼だと多くて食べられないという人向けに、小サイズの丼も提供しています。1,500円から食べれられるので、小腹がすいたときにもピッタリです。お食事処かもめ
大間マグロの冷凍技術
一番おいしい時期のマグロを、より多くの人に食べてもらうために、保存技術が進化してきています。
冷凍施設「プロトン冷凍」は、電磁波で冷気を伝え、8~10時間かけてマグロを冷凍させます。氷の結晶を小さく均一に作り出せるため、マグロの細胞を壊さないまま冷凍が可能。さらに、ドリップと呼ばれる、解凍した時に溶け出る赤い液体を抑えることもできます。
この、最新技術である「プロトン冷凍」によって、脂が一番のった時期のマグロを、おいしく長期間保存することが可能になりました。国内だけではなく、海外にもおいしい大間のマグロを届けられるようになる未来がくるかもしれません。
青森のマグロで有名なのは大間ですが、獲れるマグロは大間だけではないことがわかりました。大間へのアクセス方法や、美味しいマグロ料理が味わえるお店も合わせて紹介したので、青森観光の参考にしてみてはいかがでしょうか。