青森のグルメと聞いて、みなさんは何が思い浮かびますか?
本州最北端に位置し、西は日本海、東は太平洋、さらに北は北海道との間にある津軽海峡に囲まれている青森県。
豊かな漁場ゆえに新鮮な魚介類が獲れるのはもちろんですが、りんごやお米など良質な農作物も採れる食の宝庫です。
県内各地に海や湖、山など独自の観光資源があるため、ご当地グルメも数え切れないぐらいあります。
ご当地グルメの祭典である「B級グルメグランプリ」で優勝したことがある料理もいくつかありますので、ご存じの方もいるかもしれません。
今回は、伝統ある様々な青森グルメの中から特におすすめできるものをご紹介します。
味の想像が付かないようなものには実際に食べた感想も載せますので、ぜひ青森に来た際の食事選びの参考にしていただければ幸いです。
地元民ならではの、ちょっとしたお得情報も合わせて紹介しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
この記事の目次
十和田バラ焼き
青森県南東部にある、十和田市のソウルフードと言えば『十和田バラ焼き』。玉ねぎと牛バラ肉を鉄板の上で焼いただけのシンプルな料理ですが、その甘辛い味つけはご飯との相性が最高で、お酒のお供にも最適です。
2014年にグランプリを獲得するなどB級グルメ好きにはたまらない『十和田バラ焼き』ですが、実は十和田市で生まれたわけではなく、お隣の三沢市で誕生した料理であることはご存じでしたか?
米軍三沢基地がある三沢市では、戦後まもなく脂身の多い牛バラ肉は人気がなく、余っていました。
そこで払い下げになった牛バラ肉と当時入手しやすかった玉ねぎのみを鉄板で炒めたバラ焼きが考案されましたが、隣の十和田市では南部鉄器などの鉄板が入手しやすかった事情もあり独自の進化を続け、今に至ります。
たっぷりの玉ねぎと牛バラ肉(お店によっては豚や羊肉)に甘辛い醤油ダレを絡め、鉄板で香ばしく焼き上げた『十和田バラ焼き』、ぜひ本場で味わってみてください。
黒石つゆ焼きそば
りんごの産地として有名な、青森県中央部に位置する黒石市が誇るB級グルメが『黒石つゆ焼きそば』です。焼きそばにラーメンのスープやそばつゆをかけるという衝撃的な郷土料理ですが、ソース味の焼きそばと温かいスープが意外とよく調和し、癖になる味になっています。
使われる焼きそばは、もちろん『黒石やきそば』。
独特の太平麺に醤油ベースの甘辛ソースで味付けしたご当地焼きそばで、黒石市は「焼きそばの町」を標榜するほど地元では愛されています。
その『黒石やきそば』に温かいスープをかけた『黒石つゆ焼きそば』のルーツについては、「多忙のため間違えてスープをかけてしまった」とか、「冷めた焼きそばをまた温かく食べるため」など諸説あります。
実は『黒石つゆ焼きそば』には『黒石やきそば』に汁をかける以外のルールがありません。
基本の和風だしベースの他に、豚骨などのラーメンスープにラーメン用のトッピングをするなど、お店によってかなり味に幅が出ますので黒石市にお立ち寄りの際はぜひお試しあれ。
大間マグロ
本州最北端に位置する大間町と言えば、やはり『大間マグロ』。「黒いダイヤ」とも言われる天然の本マグロの中でも、大間のマグロは最高級品質を誇ります。
太平洋と日本海が交差し良質なプランクトンが豊富な漁場で、身が厚く脂の乗った『大間マグロ』は滑らかでくどくなく、さっぱりとした上質な味わいだと評判です。
その品質に見合う値段が付けられていて、過去には一匹(278㎏)で3億3,360万円の値を付けるほど。
2019年にすしチェーン「すしざんまい」が過去最高額で落札し、単純計算で1貫当たり約2万円相当のマグロを通常価格の300~400円で提供したことで大きな話題になりました。
今は全国でその味を楽しむことができますが、お値段的に手が出しにくいと感じている人も多いのではないでしょうか。
しかし、本場である大間町であれば比較的お手ごろな値段で、かつ鮮度の高い大間マグロを味わうことができます。
マグロ漁は例年8月~1月までですので、旬の時期に青森に訪れたならぜひ味わってほしい逸品です。
弘前いがめんち
青森県西部に位置する弘前市には、『弘前いがめんち』という郷土料理があります。「いが」とはイカのことで、プリっとしたイカの歯ごたえと旨味が強く感じられる、青森のソウルフードです。
肉の代わりにイカを加えたメンチカツで、イカのゲソを包丁で叩き、野菜と小麦粉を加えて揚げたものになります。
この比較的シンプルな料理が「おふくろの味」として弘前で広まったのには理由があります。
弘前市は青森県でも内陸に位置するため、海産物が貴重でした。
そこで、スルメイカを用いた保存食『飯ずし』がよく作られましたが、使うのは胴体のみでゲソの使い道には困っていたようです。
その余ったゲソに季節の野菜と小麦粉を加え、メンチカツのように揚げて作り上げたのが『弘前いがめんち』。
今では揚げるだけではなく、焼いたりカレー味を加えたりと様々なバリエーションがあり、弘前以外でも広く愛されています。
似たようなものは全国的に食べられていますが、新鮮なイカが手に入る青森のいがめんちをぜひお試しください。
八戸せんべい汁
日本有数の漁港を有する、青森県南西部にある八戸市には多くの魅力的なグルメがあります。その中で、八戸のB級グルメとして特に有名なのが『八戸せんべい汁』です。
南部地方で古くから愛されている南部煎餅を鳥肉やゴボウ、ネギなどと一緒に鳥出汁醤油鍋に入れた郷土料理で、江戸時代に八戸市周辺で生まれました。
現在では汁に入れるための専用の南部煎餅が作られていて、汁を吸ったモチモチの煎餅と醤油ベースの絶品スープが全国的な人気を博しています。
食べたことが無い方に伝えるなら、触感が独特なすいとん鍋のようなイメージです。
八戸市内には約200店舗ものお店がありますので、八戸に訪れた際にはぜひお気に入りの味を見つけてください。
また、現在ではせんべい汁セットが販売されているため、通販でも気軽に味わうこともできます。
他では味わうことができない、スープによく合うモチモチ触感のせんべい汁、ぜひお試しください。
大湊海軍コロッケ・カレーパン
青森県北東部にあるむつ市には、かつて旧海軍の軍港がありました。その関係でここには海軍関連のご当地グルメがいくつかあり、その一つが『大湊海軍コロッケ』です。
美味しさの秘訣は、「牛脂で揚げること」と「新鮮な下北の食材を使用する」こと。
牛脂を使うことで食欲をそそる香ばしい香りと、ラードとは一味違う深いコクが出ます。
加えて下北名物の新鮮なホタテやイカなどを具材にしているため、お店ごとに違う味わいになるのも魅力の一つです。
また、海軍と言えば絶品のカレーが有名ですが、大湊にも『大湊海軍カレー』があります。
部隊秘伝のレシピで作られた伝統的なカレーライスを、今は市内の飲食店でも味わうことができますが、そんなカレーを活用したのが『大湊海軍カレーパン』です。
コロッケ同様、牛脂で揚げ下北のホタテで旨味を出すなど、こちらもむつの名物グルメとして注目を集めています。
むつ市内だけでなく各地の物産展でも提供しているので、ぜひ独特な海軍グルメを味わってみてください。
青森味噌カレー牛乳ラーメン
青森が誇るご当地グルメの中でも、特にインパクトがあるのがこの『青森味噌カレー牛乳ラーメン』でしょう。名前の通り、味噌ラーメン・カレー・牛乳という異色の組み合わせで作られています。
青森市の味噌ラーメンのお店「味の札幌」が1978年に開発した新感覚ラーメンで、コシのある麺、トッピングもチャーシューやもやしなど、スープ以外は一般的です。
肝心のスープですが、コクのある味噌、スパイシーなカレー、まろやかさを加える牛乳やバターが混ざり合って意外にもクセがなく、まろやかで優しい味わいに仕上がっています。
市内では「味の札幌」の系列店を中心に、いくつかのお店で提供している他、現在はカップラーメンも作られているため、通販やお土産店などで購入することもできます。
青森のソウルフード、『青森味噌カレー牛乳ラーメン』。
見た目のインパクトとは裏腹に、絶妙なバランスに仕上がっていて食べやすいので、話の種に人生で一度は食べてみてはいかがでしょうか。
のっけ丼
鮮度が命な海のグルメの一つに、海鮮丼があります。エビ、マグロ、ホタテなどが乗った人気の丼ものですが、乗せる具材を自由に選びたいと思ったことはありませんか?
そんな夢をかなえる、ご飯の上に自由に具材を乗せて作るのが『のっけ丼』です。
新鮮な魚介類のみならず、様々な地元の食材が集まる市場ならではのグルメで、ご飯の上に好きなものを好きなだけ乗せることができます。
特に有名なのが、元祖『青森のっけ丼』を提供する青森市の「青森魚菜センター」です。
そこでは専用の食券を何枚か購入後、ご飯を受け取りマグロやホタテなどを食券と引き換えて丼に乗せていきます。
中にはお漬物やお惣菜の他、お肉もあり目の前で焼いてもらえます。
季節によって提供される具材は変わりますので、来るたびに新たな発見があることでしょう。
駅から徒歩5分程度の場所に「青森魚菜センター」がありますので、青森に来た際はぜひオーダーメイドの海鮮丼を楽しんでください。
ヒラメのヅケ丼(鯵ヶ沢町ほか)
ヒラメの最も美味しい食べ方の一つが『ヒラメのヅケ丼』でしょう。青森県北西部、日本海に面した鰺ヶ沢町を代表する魚であるヒラメを、それぞれのお店独自の漬けダレでヅケにし、それをたっぷりとどんぶりに乗せた鰺ヶ沢の名物料理です。
味付けや盛り付けはお店ごとに異なりますが、極上の鰺ヶ沢産ヒラメは脂が乗りつつも上品な味わいで、それが山盛りになっているのですからヒラメ好きにはたまりません。
ちなみに鰺ヶ沢のヒラメはほぼ1年中食べることができますが、旬は12月~1月で脂が乗った1番美味しい時期です。
5月下旬から6月上旬にかけては漁獲量が最も多くなる時期なので、全国でも見掛けられるぐらい価格は安くなります。
7月後半~8月はあまり獲れない時期なので、高値になりがちな点は注意しましょう。
鰺ヶ沢町だけでなく八戸市などでも食べることができる『ヒラメのヅケ丼』。
お店で食べる他、地元のスーパーや鮮魚店ではお弁当で販売しているところもあるので、近くを通った際はぜひ確認してみてください。
ホタテ貝味噌焼き
津軽や下北で愛されてきた郷土料理に『ホタテ貝味噌焼き』があります。直径15~20㎝と大きめのホタテの貝殻に味噌を溶き入れ、ホタテや魚、豆腐などを入れて卵でとじ、ネギを散らして完成という漁場町ならではのシンプルな料理です。
古くからホタテの産地として知られていた津軽湾周辺では、似たような猟師飯が江戸時代から食べられていました。
その後卵が庶民的な食べ物になると病人や妊婦だけが食べられる、栄養を付けるための特別な料理として扱われていたそうです。
今では養殖ホタテが中心となった影響で、20㎝近い大ぶりなホタテ貝は珍しくなってしまいましたが、むつ市の「みそ貝焼き普及研究会」などがレシピを公開しているのでご家庭のフライパンでも作ることができます。
もちろん県内の飲食店でも提供されているので、味噌ベースのホタテ鍋にふわりとした卵が混ざり合い、ご飯のおかずにもお酒のお供にも最適な本場の『ホタテ貝味噌焼き』をぜひ味わってみてください。
いちご煮
青森県の伝統的な郷土料理に『いちご煮』というものがあります。
甘酸っぱいイチゴを煮込んだ不思議な郷土料理……ではなく、ウニやアワビがふんだんに使われたお吸い物が『いちご煮』です。
ウニ、アワビを薄切りにし鰹出汁などで煮て塩や醤油で味付けしただけのシンプルな料理ですが、鮮度の良い魚介が手に入る港町ならではの料理と言えます。
果物のイチゴが関係ないのになぜそんな名称なのかというと、白っぽい汁の中に浮かぶウニがイチゴのように見えたことから。
かつては八戸周辺の海でウニやアワビが良く獲れていたので家庭料理としても人気がありましたが、水揚げ量が激減し高級食材となった現在では手軽に家庭で食べるものではなくなってしまいました。
それでも八戸市内の飲食店では味わうことができます。
口の中ですっと溶けるウニにコリコリ触感のアワビ、鼻を抜ける磯の香りがたまらない『いちご煮』。
おすすめの青森土産として缶詰などもありますので、出張や旅行で青森を訪れた際は手に取ってみてください。
津軽そば(弘前市ほか)
日本には様々な郷土そばが存在しますが、津軽に伝わる幻のそばが『津軽そば』です。
弘前市を中心に伝えられている伝統的な『津軽そば』は、コシがなく、茹でてすぐ食べることができず、箸で持ち上げるだけで切れてしまうなど一般的なそばとは大きく異なります。
なぜ小麦粉の代わりに大豆をつなぎとして使うようになったのかというと、江戸時代の食糧難が原因です。
かつてこの辺りでは米は貴重だったので、庶民の主食はそばでした。
しかしそれだけでは栄養が不足してしまうため、大豆をそば粉に練り込んでたんぱく質を補うようにしたのが発祥だと言われています。
大豆を煮てすり潰し、濾した煮汁をつなぎにするなどとても手間がかかるため、一時は途絶えかけた製法でしたが、平成に入ってから文献などを参考にして「幻の津軽そば研究会」が『津軽そば』を復活させました。
ほのかに大豆が香る、優しく柔らかいおそば。
弘前市などで味わうことができますので、汁物のようにすすって食べるスタイルで味わってみてください。
青森シャモロック
青森の鶏肉と言えば、『青森シャモロック』が一押しです。
青森県が誇る地鶏『青森シャモロック』の特徴は、味が濃厚で出汁がよく出る上、うまみ成分が一般の鶏肉に比べて多いこと。
そのため煮たり焼いたりして食べる他にも、出汁に使うこともでき様々な料理に利用されています。
また、肉のきめが細かく締まっていることや調理しても肉がぱさつきにくいことも相まって、素人がただ焼いただけでも美味しく食べられる点も魅力の一つです。
この『青森シャモロック』は「特産地鶏青森シャモロックブランド化推進協議会」に認められた指定農場のみで、厳格なマニュアルによって管理されているため高い品質を維持しています。
一度食べると病みつきになってしまう『青森シャモロック』、県内の飲食店で味わうこともできますし、生産者から直接購入することもできます。
親子丼、地鶏鍋、焼き鳥……。
青森県全域のお店やそれぞれのご家庭で、青森が誇る地鶏を味わってみてください。
しじみラーメン
青森県北西部にある十三湖は、しじみの名産地として有名です。日本海と岩木川から流れる淡水が入り混じった汽水湖であり、海と川に育てられたしじみはしっかりした味でありながら泥臭さがありません。周辺地域では、そんな上質なしじみをふんだんに使ったしじみ料理が楽しめますが、中でもご当地ラーメンとして人気があるのが『しじみラーメン』です。
生み出したのは、十三湖のほとりでお食事処、民宿を営む「和歌山」。
ほんのりと白く濁ったスープにはしじみの旨味が溶け込んでおり、昆布出汁と合わさって飲む手が止まらない絶品スープになっています。
麺も中細縮れ麺なので、スープとよく絡んで美味しいです。
青森県のご土地ラーメンとして、テレビなどで何度も取り上げられるのもうなずけます。
あっさりしながらもしじみのうまみが強く感じられるスープなので、しじみ好きにはもちろん、独特な臭みがないためしじみが苦手な方にも一度食べてみて欲しい一品です。